ある日突然AIが使えなくなっても、
業務を止めない。
サイバー攻撃・ 災害に、 クラウドAIと 「閉域の1台」で 備えるBCP
クラウドAIは、サイバー攻撃や回線の障害、提供条件の変更などで、ある日突然使えなくなることがあります。ランサムウェアの被害を受けて、ネットワークを切り離した日も同じです。そのとき、文書づくりや議事録まで止まってしまわないように。組織の中の閉じたネットワークにSovereign GaiXerを1台置いておけば、クラウドAIが止まっても、外の回線に頼らないその1台は動き続けます。この記事では、サイバー攻撃を含む4つの“有事”、警察庁とIPAの最新データ、平時と有事の使い分け、自治体・病院・民間企業それぞれの置き場所、電源などの備えまでを説明します。
この記事の要点
ソブリンAIによるBCPとは、サイバー攻撃や災害などでクラウドAIが使えなくなる有事に備えて、閉域網の中で動く生成AIを1台置き、文書作成・議事録・マニュアル検索などの業務を続けられるようにしておくことです。クラウドAIが止まる理由は、回線断、海外の規制、サービス終了に加えて、サイバー攻撃があります。警察庁の集計では、2026年上半期のランサムウェア被害は123件で、半期として過去最多でした。攻撃を受けてネットワークを切り離せば、クラウドAIも使えなくなります。平時は、クラウドAIと使い分けます。住民情報・患者情報・顧客情報などの機密業務は閉域の1台で。置き場所は、自治体・病院・企業のどれでも「守りたい情報のそばの、インターネットに出ない区画」です。有事には、クラウドAIが止まっても、閉域の1台はそのまま動きます。クラウドAIは平時の生産性、ソブリンAIは有事の業務継続。ただし、有事に動かすには、非常用電源やUPSなどの電源確保が前提です。また、閉域に置けば攻撃を受けないわけではないため、持ち込み手順などの運用とあわせて備えます。
- この記事でわかること①──クラウドAIが止まる“有事”とは何か。サイバー攻撃(セキュリティインシデント)、回線断、海外の規制・輸出管理、サービス終了・条件変更の4つ。
- この記事でわかること②──ランサムウェアなどの攻撃でネットワークを切り離した日に、閉域の1台で何を続けられるか。そして、閉域に置いても油断できない理由。
- この記事でわかること③──平時と有事の使い分け、自治体・病院・民間企業それぞれの置き場所、電源の確保をはじめ平時から備えておく6つのこと。
クラウドAIが止まる“有事”とは? ─ 止まり方は4つある
クラウドAI(=インターネットの先にある他社のサーバーで動く生成AI)は、便利で、性能も高い道具です。ただ、自分たちの手の届かないところで動いているぶん、自分たちではどうにもできない理由で止まることがあります。この記事では、そうした状態を“有事”と呼びます。止まり方は、大きく4つです。なかでも、いま最も身近なのがサイバー攻撃です。
サイバー攻撃で、ネットワークを切り離す・サービスが止まる
ランサムウェアなどの攻撃を受けると、被害を広げないためにネットワークを切り離します。切り離せば、インターネットの先のクラウドAIにも届きません。委託先やサービスの側が攻撃を受けて止まることもあります。
障害・災害で、回線が切れる
通信事業者の障害、地震や水害による回線の切断。インターネットにつながらなければ、クラウドAIには届きません。災害のときほど、案内文や記録の仕事は増えます。
海外の規制や輸出管理で、使えなくなる
海外のサービスは、その国の法律や規制、輸出管理のルールの影響を受けます。ルールが変われば、日本の利用者には何もできないまま、提供が止まることがあります。
サービスが終わる、条件が変わる
サービスの終了、料金や利用規約の変更、使っていたAIの提供終了。今日と同じ条件で、来年も使えるとは限りません。業務の手順に組み込むほど、影響は大きくなります。
ふだんの通勤は電車が便利です。速くて、遠くまで行けます。でも、電車は止まることがあります。そんな日に備えて、自分で運転して職場まで行ける自動車を持っておく。クラウドAIが電車なら、閉域の1台は自動車です。どちらが優れているかではなく、両方あるから止まらない、という話です。
サイバー攻撃でAIが止まったら、業務はどうなる? ─ ネットワークを切り離した日も、閉域の1台は動く
BCPで備える“有事”は、地震や停電だけではありません。いま最も身近なのは、ランサムウェア(=データを暗号化したり盗んだりして、身代金を要求するサイバー攻撃)です。国内でも、攻撃をきっかけに受注・出荷や診療、窓口の業務が長く止まる事例が相次いでいます。被害を受けた組織は、広がりを止めるためにネットワークを切り離します。そのとき、インターネットの先のクラウドAIも、いっしょに使えなくなります。
| 数字で見るサイバー攻撃のいま | 公表されている数字 | 出典 |
|---|---|---|
| ランサムウェア被害の報告件数(2026年上半期) | 123件。統計を取り始めた2020年下半期以降、半期で過去最多 | 警察庁 |
| 主な感染経路 | VPN機器(=社外から社内ネットワークに入るための機器)が約5割 | 警察庁 |
| 復旧までの期間 | 1か月未満で復旧できた組織は5割弱 | 警察庁 |
| 調査・復旧の費用 | 総額1,000万円以上かかった組織が約6割 | 警察庁 |
| 組織にとっての脅威の順位 | 1位「ランサム攻撃による被害」、2位「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」、3位「AIの利用をめぐるサイバーリスク」 | IPA |
資料はこちら:警察庁「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(PDF)/IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」
被害を広げないため、ネットワークを切り離す
感染が見つかったら、まず通信を止めるのが初動の基本です。インターネットへの出口を閉じれば、クラウドAIにも、外のサービスにも届きません。警察庁の集計では、1か月未満で復旧できた組織は5割弱。切り離しが長引くことも想定しておく必要があります。
自分たちは無事でも、 使っている サービスが止まる
委託先やクラウドサービスの側が攻撃を受けると、利用者の側では何もできないまま止まります。IPAの10大脅威でも、サプライチェーンや委託先を狙った攻撃は2位です。
調べ終わるまで、 外への送信を止める
不審なアクセスやアカウントの乗っ取りが疑われると、原因がわかるまで外部サービスの利用を止める判断が必要になることがあります。止めている間も、住民・患者・取引先へのお知らせや、対応の記録の仕事は待ってくれません。
| インシデント時に発生する仕事 | 閉域の1台でできること |
|---|---|
| 対策会議の記録(何を、いつ、だれが決めたか) | 会議の録音を本体の中で文字起こしし、議事録と時系列メモの下書きにする |
| 住民・患者・取引先へのお知らせ | 要点の箇条書きから、お詫びと案内の文書の下書きを作る |
| 上層部・関係機関への報告 | 散らばったメモや記録を要約し、報告書の骨組みを作る |
| 手順の確認(インシデント対応手順・BCP) | 本体に取り込んだ手順書から、次にやることを質問で探す |
| 紙・手作業に切り替えた業務の引き継ぎ | メモの内容を整理し、交代する職員への引き継ぎ文を作る |
インターネットに つながず、 社内LANだけで動く
インターネット遮断スイッチがあり、初期設定は遮断です。攻撃の入口になりやすいVPN機器や、外に公開された経路を通らない場所に置けます。
被害の出た ネットワークから、 切り離したまま使える
自治体の三層の対策のように系(=役割ごとに分けたネットワーク)を分けて置けば、インターネット側を切り離しても、閉域の系に置いた1台は影響を受けにくくなります。
改ざんを確かめる更新と、だれが使ったかの記録
AI-OSの更新は電子署名で改ざんを確かめてから適用し、失敗すれば自動で元に戻ります。権限の分離、連続したログイン失敗での自動ロック、監査ログも標準で備えます。
船の中は、いくつもの区画に分けられています。一つの区画に水が入っても、扉を閉めれば、ほかの区画は無事なまま、船は進み続けられます。閉域の1台は、水が入った区画とは別の区画に置いておく道具です。ただし、その区画の扉も開け閉めを管理し、だれが出入りしたかを記録しておく必要があります。それが、持ち込み手順と権限管理と監査ログです。
自組織のネットワークで、閉域の1台をどこに置けば、切り離した日にも使えるか。構成図をもとに、15分のオンライン相談でご一緒に確認できます。
平時と有事で、どう使い分ける? ─ 平時は分担、有事は閉域の1台が支える
閉域の1台は、有事のためだけにしまっておく機械ではありません。平時から、機密業務の担当として毎日使います。クラウドAIは公開情報の調べものや一般的な文書づくりに、Sovereign GaiXerは住民情報や患者情報など外に出せない情報の仕事に。有事になったら、閉域の1台が業務を支えます。
クラウドAIと使い分け。機密業務は閉域で
外に出してよい情報はクラウドAI、外に出せない情報は閉域の1台。情報の重さで道具を分けます。閉域の1台は、入力した情報をインターネットへ送らず、本体の中だけで処理します。
クラウドAIが止まっても、閉域の1台はそのまま動く
Sovereign GaiXerはインターネット接続を必要とせず、社内LANだけで動きます。通信障害や災害のときにも、手元で動き続けます。平時から閉域の1台を使っている端末なら、切り替えの操作は要りません。
| 比べる点 | 平時 | 有事 |
|---|---|---|
| クラウドAI | 公開情報の調べもの、一般的な文書づくりに使う | サイバー攻撃・回線断・規制・条件変更で止まりうる |
| 閉域の1台(Sovereign GaiXer) | 住民情報・患者情報・顧客情報などの機密業務を、閉域で処理する | 外の回線に頼らないので、そのまま動く |
| 続けられる業務 | 機密業務の下書き・要約・検索 | 文書の作成・要約/議事録・文字起こし/防災計画・マニュアルの検索 |
| 料金 | 買い切り3,806,400円。使う回数が増えても追加料金なし(電気代等の運用費を除く) | 有事に使う量が増えても、追加料金なし(電気代等の運用費を除く) |
非常用の道具を、倉庫の奥にしまいっぱなしにしていると、いざというときに使い方を忘れていたり、置き場所がわからなかったりします。毎日使っている道具が、回線が切れた日にもそのまま使えるなら、それがいちばん頼れる備えです。閉域の1台を平時から機密業務で使っておくのは、そのためです。
有事にも続けられる業務は? ─ 書く・記録する・調べる
災害・障害・サイバー攻撃のときに増えるのは、住民・患者・取引先へのお知らせ、対応の記録、手順の確認の仕事です。閉域の1台は、この3つを外の回線なしでこなせます。どれも、Sovereign GaiXerの本体の中で完結する機能です。
文書の作成・要約(住民向け案内文など)
避難所の開設案内、ごみ収集の変更のお知らせ、窓口の受付時間の変更。要点を箇条書きにすれば、読みやすい案内文の下書きが返ってきます。長い報告書を短く要約して、幹部に上げる資料にもできます。
議事録・文字起こし(ネット接続不要)
対策本部の会議を録音し、文字に起こして議事録の下書きにします。文字起こしエンジンは本体の中で動き、インターネットに接続しません。
防災計画・マニュアルの検索と回答
「避難所に配る備蓄品の基準は?」と聞けば、本体に取り込んだ防災計画やマニュアルを読んで答えます。分厚い冊子をめくって探す時間を減らせます。PDFやOffice文書を読み込めます。
回線が切れた日に役立つのは、電話帳よりも、手元にあって、すぐに答えてくれるベテランの同僚です。閉域の1台は、組織の文書を読み込んだ同僚のようなもの。外と連絡が取れない日でも、手順を聞けば答え、会議の記録を取り、お知らせの下書きを書いてくれます。
どこに置けばよいですか? ─ 守りたい情報のそばの「閉じた区画」に。自治体・病院・企業での置き場所
置き場所の考え方は、自治体でも、病院でも、民間企業でも同じです。守りたい情報のそばにある、インターネットに出ない区画(=ネットワークの中を、役割ごとに分けた一角)に置きます。呼び名は組織によって違います。自治体ならマイナンバー利用事務系、病院なら電子カルテ系、企業なら機密情報を扱う部署やシステムの区画です。選ぶときは、次の4つを満たす場所かどうかを確かめます。
- 条件① 守りたい情報のそばにある──住民情報・患者情報・顧客情報や設計情報など、外に出せない情報を扱う業務と同じ区画に置きます。
- 条件② インターネットに出ない──回線が切れても、攻撃を受けてインターネット側を切り離しても、影響を受けにくい場所です。保守用のVPNなど、外とつながる経路からも離します。
- 条件③ 使う人の端末から届く──閉域の1台は、同じ区画の端末からブラウザで使います。有事に使う人の端末が、その区画にあるかを確かめます。
- 条件④ 有事にも電気が届く──非常用電源・UPSにつながる部屋とコンセントを選びます(詳しくは次の章)。
ふだんの業務端末からクラウドAIを使う区画と、守りたい情報を扱う閉じた区画を分けておく。閉域の1台は、右側の閉じた区画に置きます。図は考え方の一例で、実際の配置は各組織のネットワークとセキュリティ規程に合わせて設計します。
| 組織 | 閉域の1台を置く場所 | ふだん使う端末 | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 自治体 | マイナンバー利用事務系 | 担当課の業務端末(ブラウザ) | 系の分離を崩さない。AI-OSの更新はUSBメモリ等を所定の手順で持ち込む |
| 病院 | 電子カルテ系など、医療情報システムのネットワーク(院内の閉域) | そのネットワークにつながった院内の端末(ブラウザ) | つなぐ前に、電子カルテなどの事業者と院内の情報システム担当に相談する。保守用のVPNなど、外とつながる経路から離す |
| 民間企業 | 社内LANの中の、インターネットに出ない区画(機密情報を扱う部署・システムの区画) | その区画につないだ社員の端末(ブラウザ) | 区画を分けずに社内LANにつなぐ場合も、本体のインターネット遮断は初期設定の「遮断」のまま使う。攻撃時に社内LANのどこまでを切り離すかを手順に書く |
電子カルテ系など、患者情報のそばに置く
多くの病院では、電子カルテなどの医療情報システムのネットワークを、インターネットにつながるネットワークと分けています。閉域の1台は、この患者情報のそばのネットワークが置き場所の候補です。新しい機器をつなぐことになるため、電子カルテなどの事業者と院内の情報システム担当に、事前に相談してください。
社内LANにつなぎ、インターネット遮断のまま使う
いちばん手軽なのは、ふだんの社内LANにつなぐ置き方です。本体のインターネット遮断スイッチは初期設定で「遮断」なので、本体からインターネットには出ません。回線断には強い一方、社内LAN全体を切り離す事態では使えなくなることがあります。
機密情報を扱う区画を作り、そこに置く
設計・研究・人事・経理など、機密情報を扱う部署やシステムの区画を作り、閉域の1台と使う端末だけをつなぎます。攻撃を受けて社内LANのインターネット側を切り離しても、区画の中では使い続けやすくなります。サイバー攻撃も想定するなら、こちらが向いています。
自治体の場合を、β'モデルで詳しく見てみます。自治体のネットワークは、「三層の対策」(=マイナンバー利用事務系・LGWAN接続系・インターネット接続系の3つに分けて守る考え方)で組まれています。そのうちβ'モデル(ベータダッシュ・モデル)は、ふだんの業務端末と業務システムをインターネット接続系に置く構成です。日常業務でクラウドAIを使いやすい一方、回線が切れると、そのクラウドAIは止まります。そこで、閉域の1台はマイナンバー利用事務系に置きます。
左端のマイナンバー利用事務系は、インターネットとは接続しない系です。ここに置いた1台は、インターネットの回線が切れても影響を受けません。インターネット接続系がサイバー攻撃を受けて切り離されたときも、系が分かれているため、影響を受けにくい置き場所です。図は構成の一例で、実際の配置は各団体のネットワークに合わせて設計します。
住民情報のそばに置く。外部とは通信しない
住民情報は庁内で処理し、外へ送りません。AI-OSの更新は、USBメモリ等を所定の手順で持ち込みます。担当課の業務端末から、ブラウザで使います。専用のソフトは要りません。
行政専用のネットワーク。系の間は分離
LGWAN(=自治体どうしを結ぶ行政専用のネットワーク)とつながる系です。マイナンバー利用事務系とは分離され、インターネット接続系とはファイアウォールで分割されています。
日常業務の端末。クラウドAIはここから使う
β'モデルでは、ふだんの業務端末がここにあります。LGWAN-ASPのサービスは、画面だけを転送するしくみ(VDI)で使います。有事に止まりうるのは、この先のクラウドAIです。
大事な書類を入れる金庫は、玄関ではなく、いちばん奥の部屋に置きます。外の騒ぎが届きにくい場所だから、外の回線が切れても、中身は守られ、取り出せる。役所ならマイナンバー利用事務系、病院なら電子カルテ系、会社なら機密情報を扱う区画。呼び名は違っても、閉域の1台を「奥の部屋」に置くという考え方は同じです。
有事に動かすには、何が必要? ─ 電源の確保と、平時からの6つの備え
「回線が切れても動く」と「停電しても動く」は、別の話です。閉域の1台が守ってくれるのは、回線の問題まで。電気は、組織の側で用意します。そのうえで、平時のうちに次の6つを済ませておけば、有事の際にも迷わず使えます。
コンセント1口。非常用電源につながる口に
本体は、AC100〜240Vのコンセント1口と、付属の240W ACアダプターで動きます。非常用電源の回路につながったコンセントや、UPSにつないでおくのが基本です。
端末・スイッチ・ルーターも、同じ電源に
本体が動いていても、職員の端末や、その間のスイッチが止まれば使えません。「本体から端末までの道すじ」をまとめて電源の計画に入れます。
約15cm角の小型。ラックも専用空調も不要
本体は約150×150×50.5mm、約1.2kg。サーバー室がなくても、非常用電源のある部屋に置けます。
- 備え① 電源を確保する──非常用電源・UPSにつなぎ、本体から端末までの機器が有事にも動くかを、防災訓練のときに確かめます。
- 備え② 文書を入れておく──防災計画、業務マニュアル、案内文のひな形を、平時のうちに本体へ取り込みます。入っていない文書には答えられません。
- 備え③ 平時から使い慣れておく──機密業務の下書きや要約で、ふだんから使います。有事の際に初めて触る道具は、うまく使えません。
- 備え④ 使う人と端末を決めておく──閉域の1台を使えるのは、設置した区画(系)の端末からです。有事にだれが、どの端末で使うかを決め、利用者の登録と権限を済ませておきます。
- 備え⑤ 更新媒体の持ち込み手順を決める──AI-OSの更新はUSBメモリ等で、閉域のまま行います。配布物は電子署名で改ざんを確かめてから適用されます。持ち込むときの確認と記録の手順を決めておきます。
- 備え⑥ サイバー攻撃を想定した手順を準備しておく──インシデント対応手順やIT-BCPに、「ネットワークを切り離した日に、閉域の1台で続ける業務」と「閉域の1台に被害が疑われるときの切り離し・確認の手順」を書き、訓練で実際に使って確かめます。
避難経路は、張り出しておくだけでは備えになりません。年に一度は実際に歩いてみて、初めて本番で迷わず動けます。閉域の1台も同じで、電源につなぎ、文書を入れ、ふだんから使っておくことで、有事の際の道具になります。
病院のBCPにも使えますか? ─ 院内の閉域で、記録と要約を続ける
使えます。考え方は自治体と同じです。患者情報は外に出さず、院内の閉じたネットワークで処理する。置き場所は、電子カルテ系など、医療情報システムのネットワークが候補です(置き場所の章を参照)。そのうえで、外の回線が切れた日にも、記録や文書の下書きを続けられるようにしておきます。病院では、サイバー攻撃で電子カルテなどのシステムが止まる被害も起きています。警察庁の集計では、2026年上半期のランサムウェア被害のうち、医療・福祉は9件でした。院内のシステムを切り離して紙の運用に切り替えた日にも、閉域の1台が被害の範囲の外にあれば、記録の整理や引き継ぎを続けられます。
診療・問診記録の下書き
メモや聞き取りの内容から、記録の下書きを作ります。入力した情報は本体の中で処理され、院外へは送られません。
医療文書の要約・引き継ぎ
長い経過記録や紹介状を要約し、交代する職員への引き継ぎに使います。人の入れ替わりが激しい有事ほど、引き継ぎの質が大事になります。
院内マニュアル・災害時の手順の検索
災害時の受け入れ手順や院内の規程を本体に入れておけば、質問で探せます。冊子を探す時間を、患者さんに向ける時間に回せます。
よくある誤解と、実際のところ
「AIのBCP」と聞くと、クラウドAIをやめる話か、高価な予備システムを眠らせておく話を想像しがちです。実際には、平時から役割を分けて使い、有事にも動く1台を持っておく話です。
| よくある誤解 | 実際は |
|---|---|
| クラウドAIを使っていれば、BCPは考えなくてよい | サイバー攻撃・回線断・海外の規制・サービス条件の変更など、利用者の手の届かない理由で止まることがあります。止まったときの備えが別に要ります |
| サイバー攻撃への備えは情報システム部門の仕事で、AIの使い方とは関係ない | 攻撃を受けてネットワークを切り離せば、クラウドAIも使えなくなります。AIを業務に組み込むなら、切り離した日の代わりの手段もBCPに書いておきます |
| 閉域に置く話は、ネットワークが三層に分かれた自治体だけのものだ | 病院なら電子カルテ系など、企業なら機密情報を扱う区画。守りたい情報のそばの、インターネットに出ない区画に置けば、考え方は同じです |
| 閉域に置いたAIなら、サイバー攻撃の心配はいらない | 閉域にも、USBメモリや系の中の端末という入口があります。持ち込み手順・権限管理・監査ログで守り、被害が疑われるときは手順どおり切り離します |
| 閉域のAIを置くなら、クラウドAIはやめるべきだ | やめる必要はありません。クラウドAIは平時の生産性、閉域の1台は機密業務と有事の業務継続。使い分けが基本です |
| 有事用のAIは、ふだんは電源を切ってしまっておけばよい | 平時から機密業務で毎日使うから、有事にも迷わず使えます。文書も平時のうちに入れておきます |
| インターネットが切れたら、生成AIはすべて止まる | 閉域の1台はインターネット接続を必要とせず、社内LANだけで動きます。通信障害・災害時にも手元で動き続けます |
| 本体さえあれば、停電しても使える | 電源確保が前提です。非常用電源・UPSにつなぎ、端末やスイッチの電源もあわせて確保します |
| 閉域に置いたAIは更新できず、古くなっていく | USBメモリ等で、閉域のまま更新できます。配布物は電子署名で改ざんを確かめてから適用されます |
用語ミニ辞典 ─ この記事に出てきた言葉
ソブリンAIによるBCP
ソブリンAIによるBCPとは、サイバー攻撃や災害などでクラウドAIが使えなくなる有事に備えて、閉域網の中で動く生成AIを1台置き、文書作成・議事録・マニュアル検索などの業務を続けられるようにしておくことです。
BCP(事業継続計画)
災害や障害が起きても、重要な業務を止めない、または早く再開するための計画のことです。
ソブリンAI
自分たちの管理下に置いたAIのことです。本記事では、組織の中に置き、外部のサービスに頼らずに動く生成AIを指します。
閉域網(閉域)
インターネットにつながず、組織の中だけで閉じたネットワークのことです。
有事と平時
有事はサイバー攻撃・障害・災害・規制などでいつもの手段が使えなくなった状態、平時は通常どおり業務ができる状態のことです。
三層の対策
自治体のネットワークを、マイナンバー利用事務系・LGWAN接続系・インターネット接続系の3つに分けて守る考え方のことです。総務省のガイドラインに示されています。
β'モデル
総務省「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」に示された構成の類型の一つで、業務端末と業務システムをインターネット接続系に置く形のことです。
LGWAN・LGWAN-ASP
LGWANは自治体どうしを結ぶ行政専用のネットワーク、LGWAN-ASPはそのネットワークを通じて提供されるサービスのことです。
UPS(無停電電源装置)
停電したときに、蓄えた電気でしばらく機器を動かし続ける装置のことです。
文字起こし
会議などの音声を文字にすることです。Sovereign GaiXerはインターネットに接続せず、本体の中でこれを行います。
VDI(画面転送)
別の場所にあるコンピューターの画面だけを手元の端末に映して操作するしくみのことです。β'モデルでは、LGWAN-ASPのサービスをこの形で使います。
ネットワークの区画(セグメント)
組織のネットワークの中を、役割や守る情報ごとに分けた一角のことです。区画どうしの通信は、ファイアウォールなどで制限します。
電子カルテ系
病院で、電子カルテなどの医療情報システムがつながるネットワークのことです。多くの病院では、インターネットにつながるネットワークと分けて運用されています。
ランサムウェア
データを暗号化したり盗んだりして使えなくし、元に戻すことや公開しないことと引き換えに身代金を要求する、サイバー攻撃の手口のことです。
セキュリティインシデント
サイバー攻撃や情報漏えいなど、情報やシステムの安全が損なわれた、またはそのおそれがある出来事のことです。
サプライチェーン攻撃
委託先や取引先、利用しているサービスの弱いところを入口にして、目的の組織を攻撃することです。
IT-BCP(ICT-BCP)
情報システムやネットワークが止まったときに、重要な業務を続ける、または早く再開するための計画のことです。BCPのうち、ITの部分を扱います。
AIのBCPについて|よくある質問(FAQ)
ソブリンAIによるBCPとは何ですか?
ソブリンAIによるBCPとは、サイバー攻撃や災害などでクラウドAIが使えなくなる有事に備えて、閉域網の中で動く生成AIを1台置き、文書作成・議事録・マニュアル検索などの業務を続けられるようにしておくことです。平時はクラウドAIと使い分け、住民情報・患者情報・顧客情報などの機密業務を閉域の1台で処理します。有事にクラウドAIが止まっても、閉域の1台はそのまま動きます。
クラウドAIが使えなくなるのは、どんなときですか?
大きく4つあります。ランサムウェアなどのサイバー攻撃を受けてネットワークを切り離したときや、委託先・サービスの側が攻撃を受けたとき、障害や災害で回線が切れたとき、海外の規制や輸出管理のルールの影響で提供が止まったとき、サービスの終了や料金・利用規約などの条件変更があったときです。いずれも、起きてから慌てても間に合わないため、平時のうちに備えておきます。
ランサムウェアの被害でネットワークを切り離したら、生成AIは使えますか?
クラウドAIは使えなくなります。インターネットへの出口を閉じれば、外のサービスには届かないためです。閉域の1台は、インターネットにつながず社内LANだけで動くため、被害の範囲の外にあり、系が切り離されたまま無事であれば、そのまま使えます。対策会議の議事録、お知らせや報告書の下書き、手順書の検索を続けられます。被害が疑われる場合は、閉域の1台も組織の手順に従って切り離し、確認してください。
Sovereign GaiXerはランサムウェアに感染しませんか?
感染しないとは言い切れません。閉域にも、USBメモリなどの持ち込みや、系の中の端末という入口があるためです。そのうえで、インターネット遮断スイッチの初期設定は遮断で、AI-OSの更新は電子署名で改ざんを確かめてから適用します。権限の分離、連続したログイン失敗での自動ロック、監査ログも備えています。更新媒体の持ち込み手順や端末側の対策と組み合わせてお使いください。Sovereign GaiXerはセキュリティ対策製品ではなく、ランサムウェアの防御や復旧を保証するものではありません。
サイバー攻撃を想定したBCPに、生成AIをどう組み込めばよいですか?
4つの手順で考えます。まず、ネットワークを切り離した日にも続けたい業務(議事録、お知らせ、報告書、手順の確認など)を決めます。次に、その業務に使う手順書やひな形を、平時のうちに閉域の1台へ取り込みます。さらに、インシデント対応手順やIT-BCPに、閉域の1台の使い方と、閉域の1台に被害が疑われるときの切り離し手順を書きます。最後に、訓練で実際に使って確かめます。置き場所や構成は、15分のオンライン相談でご相談いただけます。
クラウドAIをやめて、閉域の1台に切り替えるべきですか?
やめる必要はありません。クラウドAIは平時の生産性、閉域の1台は機密業務と有事の業務継続、という使い分けが基本です。外に出してよい情報はクラウドAI、外に出せない情報は閉域の1台で扱い、有事には閉域の1台が業務を支えます。
有事に続けられる業務は何ですか?
代表的なのは3つです。住民向け案内文などの文書の作成・要約、会議の議事録・文字起こし、防災計画やマニュアルの検索と回答です。文字起こしは本体の中で行い、インターネットに接続しません。マニュアルなどの文書は、平時のうちに本体へ取り込んでおく必要があります。
インターネットが切れても、Sovereign GaiXerは動きますか?
動きます。Sovereign GaiXerはインターネット接続を必要とせず、社内LANだけで動きます。インターネット遮断スイッチがあり、初期設定は遮断です。処理は本体の中で完結するため、通信障害や災害のときにも手元で動き続けます。
停電したら使えますか?
電源がなければ動きません。有事に稼働させるには、庁舎や院内の非常用電源・UPSなどの電源確保が前提です。本体はAC100〜240Vのコンセント1口と付属の240W ACアダプターで動くため、非常用電源の回路につながったコンセントやUPSにつないでおきます。使う端末や、間をつなぐスイッチ・ルーターの電源もあわせて確保してください。
閉域の1台は、どこに置けばよいですか?
守りたい情報のそばにある、インターネットに出ない区画に置きます。自治体・病院・民間企業のどれでも、考え方は同じです。選ぶときは、守りたい情報を扱う業務と同じ区画であること、インターネットや保守用のVPNなど外とつながる経路から離れていること、有事に使う人の端末から届くこと、非常用電源・UPSにつながることの4つを確かめます。実際の配置は、各組織のネットワークとセキュリティ規程に合わせて設計します。
自治体のβ'モデルでは、どこに置けばよいですか?
構成例としては、マイナンバー利用事務系に置きます。外部と通信せずに住民情報を庁内で処理でき、AI-OSの更新はUSBメモリ等を所定の手順で持ち込みます。担当課の業務端末からブラウザで使います。図は構成の一例で、実際の配置は各団体のネットワークに合わせて設計します。
病院や民間企業では、どこに置けばよいですか?
病院では、電子カルテ系など、医療情報システムのネットワーク(院内の閉域)が置き場所の候補です。新しい機器をつなぐことになるため、電子カルテなどの事業者と院内の情報システム担当に事前に相談し、保守用のVPNなど外とつながる経路から離れた場所を選びます。民間企業では、機密情報を扱う部署やシステムの区画を作って置くのが、サイバー攻撃にも強い置き方です。区画を分けずに社内LANにつなぐ場合も、本体のインターネット遮断は初期設定の「遮断」のまま使います。
有事に、インターネットにつながる端末から閉域の1台を使えますか?
区画(系)の分離を崩さないため、閉域の1台は設置した区画の端末から使います。有事にだれが、どの端末で使うかを平時のうちに決め、利用者の登録と権限を済ませておいてください。複数の区画で使いたい場合は、追加の台数を含めて配置を相談できます。
LGWAN-ASPのGaiXerと、Sovereign GaiXerは何が違いますか?
GaiXerは、提供元FIXERの生成AIサービスで、LGWAN-ASPに登録されたクラウドサービスです(2024年12月登録)。LGWANを通じて利用します。Sovereign GaiXerは、組織の中に置く1台で、外部と通信せずに本体の中で動きます。回線に頼らないため、有事の業務継続の備えにも使えます。
病院のBCPにも使えますか?
使えます。院内の閉じたネットワークに置き、診療・問診記録の下書きや医療文書の要約、院内マニュアルの検索に使えます。患者情報は本体の中で処理され、院外へは送られません。生成結果は医療従事者の確認を前提とした下書き支援であり、診断・治療の判断を代替するものではありません。有事に動かすには電源確保が前提です。
まとめ:AIのBCPを、一言で理解する3点
- クラウドAIは、ある日突然止まることがあります。サイバー攻撃、回線断、海外の規制・輸出管理、サービス終了・条件変更。ランサムウェアの被害は2026年上半期に半期で過去最多となり、攻撃でネットワークを切り離せば、クラウドAIも使えなくなります。
- クラウドAIは平時の生産性、ソブリンAIは有事の業務継続。平時は使い分け、機密業務は閉域の1台で。有事には、閉域の1台が文書・議事録・マニュアル検索を支えます。
- 有事に動かすには、電源確保が前提です。非常用電源・UPSにつなぎ、文書を入れ、使う人と端末を決め、ふだんから使っておく。サイバー攻撃に備えるなら、持ち込み手順と切り離しの手順も決めておく。それで初めて、頼れる備えになります。
電車は速くて便利です。でも、止まる日があります。そんな日に、ふだんから乗っている自動車があれば、職場には行ける。クラウドAIという電車を使いながら、Sovereign GaiXerという自動車を、平時から機密業務で毎日走らせておく。燃料を入れておくのが、電源の確保です。まず頼れるバックアップを、閉域網に1台。それが、AIを業務に組み込む組織のBCPの第一歩です。
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政府・自治体・病院に、そのまま持ち込める理由。Sovereign GaiXerが「ソフトウェア」として担う4つのこと。
「うちの構成だと、どこに置けば切り離した日にも使える?」ネットワーク構成とBCPの手順をもとに、15分のオンライン相談で確認できます。資料請求と、実機のトライアルも受け付けています。
記載の内容は2026年10月時点の情報にもとづきます。ランサムウェア被害の件数・感染経路・復旧期間・費用は警察庁「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(2026年9月公表)、脅威の順位はIPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」(2026年1月公表)の公表値にもとづきます。閉域に設置しても、サイバー攻撃を受けないことを保証するものではありません。Sovereign GaiXerはセキュリティ対策製品ではなく、ランサムウェア等の防御や復旧を保証するものではありません。被害が疑われるときは、組織のインシデント対応手順に従ってください。β'モデルは総務省「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」の類型です。図は構成の一例で、実際の配置は各団体・各組織のネットワークに合わせて設計します。閉域に設置した本体は、系の分離を保つため、設置した系の端末から利用します。有事に稼働させるには、庁舎・院内の非常用電源・UPSなどの電源確保が前提です。本体の消費電力やUPSでの稼働時間は、構成や機器によって異なります。設置場所や配置の詳細は、15分オンライン相談でご確認ください。AIの出力は下書きであり、住民向けの文書や公式の記録は職員が確認のうえご利用ください。医療向けの生成結果は医療従事者の確認を前提とした下書き支援であり、診断・治療の判断を代替するものではありません。クラウドAIについての記述は一般的なクラウド型生成AIサービスについての想定であり、個別の製品・サービスを比較したものではなく、特定の事業者を推奨または非推奨するものでもありません。価格はすべて税別です。「追加料金はかかりません」は電気代等の運用費を除いた本体価格についての記述で、GaiXer Careなどの有償オプションは別です。GaiXer(クラウドサービス)のLGWAN-ASP登録の詳細は、提供元FIXERの発表をご確認ください。「AI-OS」は、AIを業務で安全に使えるようにする基盤ソフトウェアの役割を分かりやすく表した呼称です。電車・自動車・金庫などへのたとえは製品の使い方を説明するための比喩であり、特定の製品との互換性や同等性を示すものではありません。ThinkStationはLenovoの商標です。「Sovereign GaiXer」は商標出願中です。
記載の会社名・製品名・サービス名は、各社の商標または登録商標です。